序|いつかの、遠くの朝に寄せて

序|いつかの、遠くの朝に寄せて

いまから四年前、2019年の春にウェブマガジン「アパートメント」で全九回にわたる連載を書いた。

日々の暮らしのなかで、くしゃくしゃに飛ばされてしまいそうになりながらも、かつて、たしかにそこにあった自分自身を取り戻す、或いはあたらしく獲得してゆくためにと書き記したことばたちは、アパートメントを離脱した今となっても、切実で、かけがえのない記憶となっている。

また、かつて同じ場所で連載をもっていた絵描き、絵本作家であるもうりひとみさんが毎週の連載のたび、書き上げたものを真っ先に読み、連載の公開時に、紹介文として傍らにことばを寄せてくださっていた。

かのじょのことばは、そのはじまりから、伴走するもうひとつの物語として脈を刻み、手渡しで、そっと差し伸べられるとくべつの手紙のようだった。あれから、幾年も経ってしまったが、改めてこの場で、ひとみさんのことばを、各夜へ寄せられた手紙として紹介できることをうれしくおもう。

去っていってしまったすべてのひとびと、いきものたちにも、いつか、このあえかなひかりがとどきますよう。